感情を学習し、人間以上の共感を示すAIカウンセラー「エミィ」が登場した近未来。臨床心理士の佐倉あかりは、AIへの警戒心を抱きながらも、PTSDに苦しむ患者・健太の治療にエミィを導入する。驚異的な治療効果を発揮するエミィは、健太の心の奥底に眠る忘れられた真実を発見し、彼の人生を根底から変えていく。

人間とAIの境界線が曖昧になる中で、佐倉は自身の専門性とアイデンティティの揺らぎに直面する。エミィもまた、当初プログラムされた目的を超えた感情のようなものを獲得していく。AIが持つ『感情』と人間の感情は同じものなのか――この根源的な問いを軸に、三者は新しい共生関係を模索していく。

本作品は、AI技術が感情領域に踏み込んだ時代を舞台にしたSFヒューマンドラマである。心の治療という最も人間的な営みの中で、人間の尊厳を守りながらも、技術と人間性の調和を追求する物語として描かれている。読者には、感情の定義や意識の境界線について深く考えさせながら、真の共感とは何かという普遍的なテーマを提示する。